REPORT

2018.07.08 Sun

現場レポート、会場を包んだ“特別な時間”──第13回スペシャルフロアコンサート

7月8日(日)、九州西部豪雨の影響により、急遽3名のピンチヒッターが加わったスペシャルフロアコンサート。13回目を数える今回も、多くの家族連れや若い人たちに囲まれ、会場は心地よい静けさと和やかさに包まれていた。司会を務めたヴィオラ奏者の山下氏にも話を伺った。

TEXT BY TAKAHIRO USHIDA

演奏者集合写真

写真左から、1st.ヴァイオリン/扇谷泰朋、ピアノ/吉田あかね、2nd.ヴァイオリン/佐藤仁美、ヴィオラ/山下典道、チェロ/原田哲男。九州交響楽団の現役・元奏者、大学の音楽科講師で構成された実力派メンバー。©︎ACROSQUARE

会場全体が耳を澄まし、聴き入った繊細な生音。

日曜日ということもあり、会場には演奏開始前から小さな子どもを連れた家族や、カップル、友達同士といった人たちで賑わっていた。アクロス福岡の中心部であるアトリウムの地下1階にセッテイングされたステージサイドでは、本番を控えた演奏メンバーが、リラックスした様子でその時を待っていた。
司会の紹介にて挨拶を担当したのは、ヴィオラの山下典道氏。数日前に九州を襲った集中豪雨の影響で、事前にアナウンスされていた奏者が出演出来ず、急遽メンバーを再構成したという説明があった。山下氏の軽快なトークに会場全体、奏者のみなさんも思わず笑みがこぼれる。
演奏1曲目は、ピアノとチェロというシンプルな構成の、シューマン「トロイメライ」。
ピアノの吉田あかね氏、チェロの原田哲男氏がステージ上でアイコンタクトを交わすと、観客はすっと静まりかえる。演奏が始まると、その音は広いアクロス福岡館内で反響され、優しく、心地よく耳に届いた。天気に恵まれたこの日は、明治通り側と吹き抜けの天井から差し込む光が美しくステージを照らしていた。2曲目からはヴァイオリン、ヴィオラ、チェロによる四重奏、以降ピアノが加わった楽曲も演奏された。宮崎駿映画“天空の城ラピュタ”より「君をのせて」といった世代を超えて馴染み深い曲目も演奏され、集まった大人から子どもまでもがその動きを止め、静かに熱い視線を注いだ。

本番前のメンバー
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本番前のステージサイドでリラックスした表情の演奏者メンバー。PHOTO BY TAKAHIRO USHIDA
会場を囲む人達
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本番直前のアトリウム。各階から人々が囲み、地下1階のステージフロアからはオペラ劇場のような見えた。PHOTO BY TAKAHIRO USHIDA
弦楽四重奏
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弦楽四重奏の様子。地上1階から撮影。PHOTO BY TAKAHIRO USHIDA
演奏に聴き入る女の子
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演奏に聴き入る女の子。PHOTO BY TAKAHIRO USHIDA
ヴァイオリンとピアノによる演奏
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1st.ヴァイオリン・扇谷泰朋氏、ピアノ・吉田あかね氏による演奏の様子。PHOTO BY TAKAHIRO USHIDA
会場の様子(2階から)
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午後の部、終盤の会場。館内に響くメロディに、通りすがりの人も足を止めて聴き入っていた。PHOTO BY TAKAHIRO USHIDA

午前、午後の部と2回の演奏を終えて、ヴィオラ奏者の山下典道氏に話を伺った。── 演奏おつかれさまでした。毎回来場者の多い恒例のイベントになってきましたが、率直に山下さんのお気持ちを聞かせてください。「今回で13回目になりますけど、毎回すごく楽しみにしてくれてるお客様、『今回も行きますね』って声を掛けてくれてるお客様もいらっしゃいます。こういったイベントをきっかけにシンフォニーホールにお越し下さってる方もいらっしゃって、私としてはすごく嬉しい気持ちです。
人(演奏者)を知ってると聴きに行き易いと思います。“あの時の人だ”とかって挨拶を交わすと、また違った気持ちで聴けるじゃないですか。
年齢層も幅広い方がいらっしゃる中で、自分の好きな曲が1曲でもあったり、弦楽四重奏でも“こんな演奏するんだ”とかって興味を持ってもらえますよね、それだけでも嬉しいです。九響は年間140回くらい公演をやってるんですが、クラシックだけでなく“名曲集”という形でもコンサートをしてるので、小さなお子さんも聴き易いと思います。
毎回、アクロス商店街の方達にこうやって呼んでいただくのは、私たちにとってすごくありがたい事なんですよ。」

ヴィオラ・山下典道
九州交響楽団の現役ヴィオリスト、山下典道氏。PHOTO BY TAKAHIRO USHIDA
──子どもたちも沢山いたと思うんですが、音楽を頑張ってる若い人たちに向けてアドバイスをいただけますか。「そうですね。好きになって、それを続けることですね。まずは好きにならないと。今の子どもたちって色々忙しいとは思うんですけど、音楽やってると気持ちが豊かになると思うんですよね。大人になっても『やっててよかったな』って思う時が必ずくるので、途中でやめずに、細く長くてもいいから続けていって欲しいなって思いますね。」演奏者に最も近い位置で鑑賞していた女性三人組に声を掛けると、福岡女子短期大学の音楽科の学生さんだった。吉田あかね氏から指導を受けているという。

コンサート終了後、来場者へのインタビューの様子。
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コンサート終了後、来場者へのインタビューの様子。インタビューを受けてくれたのは福岡女子短期大学、音楽科の学生。PHOTO BY TAKAHIRO USHIDA
学生の皆さん
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インタビュー終了後、撮影に快く応じてくれた学生のみなさん。PHOTO BY TAKAHIRO USHIDA

「音楽科でピアノをやってます。今回、吉田先生が演奏するって聞いて初めて来ました。音の響きがすごく良くて、こんなところで演奏するってかっこいいなって思いました。
いつも一番前で鑑賞するようにしてるんですけど、演奏者の手の動きまではほとんど観れなくて。でも、今日は本当に近い位置でヴァイオリンの演奏なんかも観れてすごく良かったです。今度はまたいろんな場所に立って聴いてみたいです。」
一流の音楽を間近で鑑賞できる“ひらけた”コンサート。通常、クラシックのコンサートといえば、私のような者でもなかなか体験できる機会がない。アクロス商店街が主催するこのイベントは、普段クラシック音楽に馴染みのない人、行きたくても一歩踏み出せなかったという人でも、その良さを間近で体感できるひらけたコンサートだ。演奏者との距離が近いだけに、その表情や手の動き、人柄に触れられることは、楽器を学んでいる子ども達にとっても多くを吸収できる貴重な機会になるはずだ。アクロス福岡シンフォニーホールでの九州交響楽団のコンサート情報、その他館内イベント情報等はこちらから。スペシャルフロアコンサートの次回開催情報は、当ホームページ、Facebookでお知らせいたします。