STORY

2018.04.17 Tue

「リピーターを裏切らない」、喫茶店文化に傾倒した店主の店舗像──菊竹珈琲堂

季節限定のスイーツにオリジナルブレンドのコーヒー、定番のサンドイッチセットまで、女性客を中心に人気メニューの豊富な菊竹珈琲堂。アクロス福岡創業時からの“純喫茶”が、若い世代から20年来の常連客にまで愛され続ける理由とは。

TEXT BY Takahiro Ushida

手作りサンド

手作りのマッシュポテトとボイルドチキンを挟んだボリュームのあるサンドは、女性のお腹を満たす丁度良い食べ応え。サンドの中身は注文時に5種類の中から選ぶことが出来る。PHOTO BY TAKAHIRO USHIDA

『はじめから自分のお店を持ちたかった』「大学の時に東京に居たんですけど、喫茶店とコーヒーが好きで、客として飲みに行って。“喫茶店の中で過ごす時間”というのがすごく好きだったんですよね。自分で喫茶店をやって、それが仕事になればいいなと思って。全く就職活動もせずに(笑)。
喫茶店で五年くらい働いて、その後29歳の時に自分のお店を持ちました。いざこういう道に入ったんですけど、見るのとやるのとでは大違いで(笑)。『こんなに大変なんだ』って思いましたよね。やっぱり一番はお金の問題なんですけど。当時出店を考えていた時に、たまたま新出光石油さんが新しいビルを作るという事で、『1階に喫茶店が欲しい』という話をいただいて。ただ、内装から全部やるのは金銭的にも負担が大きいので、リース店舗という形でさせていただいたんです。天神3丁目のKBCの近くに、新出光石油があるのはご存知ですか? そこのテナントスペースで始めたのが最初ですね。
お店って1店舗目を出すのがやっぱり一番大変なんですよね。銀行にお金を貸してくださいって言っても50円も出してくれないです(笑)。信用が何にも無いから。そういう点ではラッキーでしたよね。それから数年後にアクロスが決まって、引っ越して来たかたちですね。」

ストレート豆を少量ずつ焙煎
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ストレート豆を少量ずつ焙煎するためのオリジナルの器具。豆の色の変わり具合を確かめながら、時間をかけて振っていく。PHOTO BY TAKAHIRO USHIDA
焙煎中の菊竹さん
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焙煎中の菊竹さん。PHOTO BY TAKAHIRO USHIDA
焙煎直後のコーヒー豆
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焙煎直後のコーヒー豆。PHOTO BY TAKAHIRO USHIDA
マロングラッセ大福
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オリジナルの創作和菓子「マロングラッセ大福」。甘さの丁度いい餡子はコーヒーとよく合う。女性を中心に人気のスィーツ。PHOTO BY TAKAHIRO USHIDA
厨房内の様子
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厨房内は菊竹さんを中心に、コーヒーの抽出から調理までスタッフの連携で手際よく作業が進行していく。PHOTO BY TAKAHIRO USHIDA

──その当時の福岡のカフェ(喫茶店)事情というのはどうでしたか。「当時はいわゆる〝従来型の喫茶店〟がほとんどですよね。ドトールもまだ出来てなかったし、スタバはもちろん後になってからの話で。こういう形式の喫茶店というのが主流でしたね。私のお店はもう23年くらいになりますかね。変わらないですよ。当時から来てくれてるお客さんもいらっしゃいますし。お客さんも私も年をとってきて(笑)。私は今年で60になります。いよいよ還暦だなあと。」
──個人的には昔ながらの純喫茶の雰囲気が好きなんですが。ビルの地下にひっそりとあって、ドアを開けると上に付いたベルが〝チリンチリーン〟って鳴って、座り心地のいいベロアのソファ、暗めの照明っていう。「私が学生時代に行ってた店もそういう感じですね。東京の〝西荻窪〟という所に住んでたんですけど、個性的な喫茶店が多かったですね。漫画家さんがたくさんいるようなところで、いい街でしたね。隣は吉祥寺で。その時に好きだった体験が自分のベースになってるというのはありますね。」「うちのお店はどちらかというと落ち着いた〝大人のお店〟かなと思ってます。でも気軽に立ち寄れる場所なのかなと。ここ(アクロス福岡)は催し物なんかも多いので、その帰りに必ず立ち寄ってくれるお客さんもいます。喫茶店ってどこもそうだと思うんですけど、常連さんって多いですよね。うちも毎日だとか、三日に一回、週に一回は必ず来てくれる方がいます。初めてってやっぱり構えてしまいますけど、でも一度入ってみて『良かった』って思えたら、また来ようって思えるじゃないですか。そういうお店でいたいですよね。
コーヒーで言うと一番はやっぱり豆なので。それを見極めること、基本的な淹れ方を守れば美味しいコーヒーになるというのが私の考え方ですね。
私の場合はとにかく、アルバイトの当初から毎日コーヒーを淹れて、わからないことがあれば本を見て調べるという感じでしたね。おかげさまでうちはオリジナルブレンドの豆の使用量がすごく多いんですよね。お店のスペースの関係もあって、焙煎機までは置けないんですが、ストレートの豆に関しては少量ずつ焙煎してます。ストレート豆はシーズンで違ってくるので、種類が変わったりしますよね。その時々で良いものも仕入れてます。農産物なので、例えば去年すごくいい豆だったとしても、今年も同じように出来が良いかと言ったらそうではなくて。同じ国、同じブランドの豆でも毎年状態が違いますね。
スイーツ類を目当てに来ていただける20代の方もいらっしゃいますね。最近だったらオリジナルの〝桜餅〟。次は〝マロングラッセ大福〟ですね。求肥(ぎゅうひ)で餡子を巻いて、中にマロングラッセを入れた創作和菓子なんですけど、そのシリーズを出そうと思ってます。」


サンドイッチセット

取材時に注文した「サンドイッチセット」。メインのサンドにサラダ、スープ、フルーツ、ドリンク付きで778円(税抜)。PHOTO BY TAKAHIRO USHIDA

定番の『サンドイッチセット』「既成のものは使わずに、全て真面目に手作りしてます。マッシュポテトも。果物は季節のもので、今だとイチゴとか、ドラゴンフルーツも入ってます。丁度いいくらいのボリュームなんですけど、結構食べ応えがありますよ。女性に人気のメニューです。ごゆっくりどうぞ。」取材時はランチタイム明けの14:00くらいであったが、店内は女性客を中心に賑わっていた。菊竹さんの大切にしていることは、丁寧な調理とおもてなしで客を楽しませること、そこに“帰ってくる”常連客の期待を裏切らないことのように感じた。毎日ではなくても、近くへ来たら必ずそこで落ち着きたくなる、馴染みのメニューで一息つきたくなる、そういう場所は誰しもが必ず一つは持っているはずだ。若い世代を中心に福岡で「地元カフェ」が人気を博している理由は、外資や大型店には無い、多様な世代の1つのコミュニティ空間として成立していること、そこに安堵を求める客と店との信頼関係が成立しているからではないだろうか。